2003/06/04 『ルーマニアの首都・ブカレスト入り。 』 昨夜寝たのが3時過ぎていたのに、6時半に目が覚める。二度寝が恐い時間なのでシャワーをあびる。ルーマニア正教の教会の隣の宗教グッズ屋で買い物をし、朝食を取りチェックアウトとなる。見送りにカティが来ていて「おめでとう!」と書いた小さな紙をくれる。気持ちはありがたい。キリアックも見送りにくるが、別に感動も無く、わりとあっさりめの別れが来る。 バスに乗り、すぐに眠る。黒の教会のある街では志賀氏がバスの中で皆に色々とガイドしてくれるが、バスは止まる事無く走り抜ける。志賀氏のガイドはとても面白かった。昼食に猪やら鹿やら熊やらの肉を食べる。なんとか人の料理のようだ。 生演奏のあと、チップを払う。ここで飲んだ赤ワインが凄く旨い。志賀氏の会社で扱っているようなので売ってもらおう。 その後、お城を見に行くが、着いたのが遅く中に入れない。レースを売りに来るジプシーはしつこい。皆なんやかやと言いながらお土産を買っている。バスでまた寝る。 8時にブカレストのブランドラ劇場に到着。下見する。面白い劇場だ。期待に胸が膨らむ。 この地での宿泊先のブレバルドホテルに着く。星三つである。さすが星の威力!!!! 冷蔵庫が付いていて広い。しかし、この街は治安が悪そうだ。タウン誌にはHなマッサージの広告が多い。長旅には目の毒。 「自然の会inルーマニア」を開催予定が、皆で食事に行く事になり、変更。チャイニーズを食べようとしたが見つからずタイレストランで食事。これが旨い。しかし、トムヤムクンに海老は無く、カニカマであった。一人43万レイ払う。高い。 ノンストップショップでビールと水を買い、部屋に戻る。七字さんがシビウに残ったため、同室の山下さんが七字さんの部屋へ移動。久し振りのプライベート。 しかし、朝起きれるのか!?緊張感が必要だ。緒方氏はシビウにスーツケースを忘れたようだ。可哀想。だんだん皆疲れが溜って来ているようだ。しかしこの旅は優雅なものである。 明日は一日仕込み。これだと僕はゆっくり出来る。 さて、ラストのステージに向け頑張ってみるか・・・。 追記 BITEI演劇祭と違って、何の盛り上がりも感動も無く別れは終わった。せっかく、別れを感動的なものにしようとしてくれたカティには、悪い事をしたと思う。所在なげにしてたしね。遠藤さんも何かできる事があれば協力します。ってキリアックに別れの挨拶で言ってたけどどこか空々しかった。後で知ったのだけれど、キリアックは、演劇大学を卒業していないらしい。ヨーロッパでは、それは致命的なことらしく、演劇界では相手にされないようだ。それで、彼は、俳優として認知されようとこのシビウ演劇祭を始めたようだ。つまりは、相当切羽詰まっていて焦っているって事ね。まるで、政治家のようだ。可哀想と言えばそうだけど、やり手って言えばやり手だわな。 昼には、山にある狩猟民族の家のようなレストランで民族衣装を身にまとったウエイターが運んでくる結局何の肉だか分からなかった肉を食べた。肉は、ともかく、パンが旨かった。このパンなんだが、余りの旨さに後輩の赤池(女性)が袋にいれて持って帰ろうとした。結局3つ位隠しもっていたと思うが、、、。ぼくは、彼女に3人の子供が居て女手ひとつで育てていると言うキャラクターを作ってあげた。 |
2003/06/05 『 仕込み。』 朝から仕込みである。 このホテルの朝食は何処よりもシンプルであった。 この旅中どの劇場でもそうであったが、劇場付きの照明さんは、機材に触られるのを嫌うようだ。言葉の問題もあるが、遅々として作業が進まない。 徹夜になるのかぁ!!! という感じである。通訳のダディネラ嬢はさぞ疲れた事だろう。 昼食の後、竹内氏が劇場スタッフと話をし、機材に触っても良いと言う事になってから、急ピッチで作業が進む。 一応の作業が終わった。 続いて稽古。楽士の橘氏と入野氏のいつにないダメだしで場がしまっていく。 作業で疲れているせいか、僕はもういっぱいいっぱいである。 そんな中で、悪いとは思うが、役者どうしでお前がダメだとか言われるとじゃあおまえに任せるよ、てなってしまう。作品を良くするためにリーダーシップをとって来たのだが、言葉は大事である。言い方ひとつですべてが変わっていく。 僕ももっと大人になればいいのだが・・・。 夕食後、竹内氏と部屋で飲む・・・。 追記 久しぶりに独りになったのだが、緊張感が抜けたのか?朝起きたらベットから落ちて床で寝ていた。しかし、この国は、日が暮れるのが夜10時位で朝は、普通に来るものだからなんか面白いし、長い夕方の楽しみ方が色々考えられて羨ましい。 ホテルの朝食は、一番何も無い。パンとハムとチーズだけみたいな感じ。 照明の通訳は、ダディネラさんが専属でやってくれていたのだけれど、彼女も舞台の人じゃ無いから舞台専用の言葉の意味がなかなか分からず苦労していたと思う。この頃には、大分慣れていたけれど。ほんと、お疲れでした。 作業の途中からホールのロビーで稽古を開始。本当に僕が気になっていた所も含めてこの小栗に初演から参加なさっている橘さんならではのお言葉で実によい稽古が出来た。 シビウで少し話を聞いてもらったからかな?と少し思ったが、この、ラストのステージに向けて気を引き締めるためにも稽古して下さってと言う事でホントに助かります。 今度は、もっと早くやりましょうね。 そして、言葉。言葉。言葉。である。本当に、言葉、ひとつで人に与える印象が変わっていくのだから恐ろしい。この旅では、実感しました。僕、自身もあまり言葉が上手な方じゃ無いけれど、、、。状況にあわせて言葉を選ばないとせっかくの提案や意見でもただの嫌がらせや悪口に変化してしまうのです。 本当に、難しい。 その夜も、竹内さんと言葉についてはなしあった。と、思うけれど、、、。 |
2003/06/06 『 本番だったのに、、、? 』 今日も照明部は10時入り。皆は13時30分入りである。可哀想なので、斉藤はその間で良き所で来てくれれば良いという事にした。 劇場に向かう道々、言葉の重要性を竹内氏と話し合う。しかし、少しずつではあるが、皆成長はしているみたいだが・・・。歩みが遅いと感じる。 仕込みは無事終わり、稽古。 橘氏が皆を引き締めてくれている。嬉しいし、ありがたい。自分はこのところ疲れていて、芝居に集中出来ないでいる。最低であるが、仕方が無い。 本番まで2時間。シャワーを浴びて身を浄め、最後のステージにのぞんだ・・・つもりだったが、自分はミスを連発。やはりスタッフと兼用の弊害が出ている。 全体はいつになく躍動していて、ヨカッタのではないだろうか・・・。 バラシの直前に大使館の方々とドイツの女優達が楽屋にやってきて喜んでいた。 夕食。川魚を食べよう、打ち上げもかねて全員でレストランに行く。 緒方氏し遠藤氏と同じテーブルになる。緒方氏が今日の芝居を観て、役者として僕の足りない所は沢山分かったとおっしゃられた。悔しい。が、芝居に集中出来ていなかった自分の負けである。教えを請おうとおもったら今は伝えきれないと言うので、日本に戻ったら吉祥寺のお宅へ遊びに行く事に決めた。 夜中にホテルの僕の部屋を飲み部屋として開放しようと何人かに適当に声をかけたが、あまりこなかった。あいかわらず人気がないなあ。(笑) 玉寄さんと竹内さんは早くに帰り、緒方さんモルドバのあの美味しいコニャックを差し入れてくれた。志摩さんもカティサークを差し入れ、僕もビールを5本用意したが、橘さんと野村と三人で飲んでいた。だけど野村は明日からパリである。 最後には橘さんと二人。小栗とボートについての話は尽きないのである。 追記 いやあ、惨敗。惨敗。僕の計算ミス。でした。 こんなに自分がメンタルの低い役者だったとは、、、。 作業と疲れでしょうか、、、?右足首が捻挫。右手首の痛み。なんじゃ! 身に覚えのないこの感じ。焦燥感。とにかく、集中しなければと焦り、シャワーをあび、ロビーでストレッチ。しかし、なかなか、切り替わらず。20分位寝てしまった。 とにかく、勉強しました。役者の自分は、自分が守るしかないと。 僕は、カーテンコールに弱いタイプの役者なのですが、どう言う事かと言うと、泣きそうになるのですね。きゃー。ところが、僕は凄い冷めてしまっていた。芝居は、ほんと全体は、ミスもあったけれど良かったと思う。お客さんもオールスタンディングで良かった。でも僕は、すっごく、悲しいのだけれど、冷静で、なんというか、ラストのステ−ジだし、本当は、泣きたかったんだけれど、心がかたまっていて、ホント駄目。悔しいけれど全力で打つかれて無かったのかも知れない。いま、思い出しても悔しくて、言葉につまります。 |
2003/06/07 『 OFF。』 昨日は朝まで飲んでしまい、軽く酒が残っていた。皆ドラキュラの城へ行ったようだ。 私は、12時すぎに目を覚まし、首を寝違えた。葉書を書き、たまっていた日記を書く。 ホテルの下のスーパーでお惣菜を買い、山下さんと遅い昼食を食べる。 その後骨董街へ赴くが、収穫なし。夜の芝居は、まあ良かった。 その後、吉岡とダディネラさんと山下さんとルーマニア料理のレストランへ入り、盛り上がる。 追記 竹内さんと野村はフランスに旅立った。劇場の下見だって。羨ましい。 後輩の川良にドラキュラの城でなにか買って来て、と頼んだら、すっごいのをかってきてしまった(笑)。あとで、なにかはお知らせします。 このときに寝違えた首がまだ痛い、長いようである。いまは、もう、10日以上経っているのに、、、。 山下さんは、志賀さんと制作の仕事で出かけていたけれどそのときに聞いて来た。『ひまわりプロジェクト』の話は、とっても面白かった。これも後程、、、。 この日みた芝居はルーマニアでは、子供でも知ってるくらい有名な古典のはなしの芝居でどうも選挙の話なんだけれども内容は、分からなかった。でも、最後にみんなで踊る所がとっても気に入った。上手に踊らない。と、いうか役者の踊りってこういうのだよな!って感じで好き。でも、2階席の客が、態度悪かった。芝居している役者もそれをネタにしなければならないくらい。そして、携帯ではなしている人も、、、。どうなんでしょう。 その後、夜のブカレストをさまよいながらレストランを探しているとそのレストランはもはや潰れている事が判明。て、言うのも、ルーマニアの首都だけあってやはりお店の回転も早いみたい。その事を教えてくれた音楽堂の警備員は、親切すぎるくらいにお店を教えてくれた。人と話すの久しぶりなのかな? 教えてもらったレストランは、きちんとしているのか?料理は1時間も出てこづ、、、。それでも、ビールを飲み飲み待っていたが、、、。それでも来ないのでルーマニアの美味しいワイン『JIDVEI』を頼む。ほぼ一人で飲んでしまったが、、、。 僕は、羊を焼いた料理を頼んだ。これが、意外と旨かった。しかし、1/3は、かたくて食べれなかった。 なかなかに楽しい夜を過ごしたが、この街は、至る所に革命の傷跡が残っていた。まだ、壊れているビルの壁面。修復してあるけれどコンクリートで埋めただけの砲弾の痕。革命以前に壊され今、また、蘇ろうとしているいくつかの教会。この中に僕のとっても気に入った教会があるのだけれど。中には、とても素敵なイコン画があって。また、行く事があるのかな? |
2003/06/08 『 打ち上げパーティー。』 今朝は早くに起きて、本当の骨董街に出かける。が、その前に七字さんが本日合流するので山下さんが部屋に移動して来た。 骨董街には、街で偶然であった、小野村さんと冨田さんに案内してもらう。お礼に「皺取りクリーム」の売っているファーマシー(薬局のようなもの)に案内する。 骨董街をぶらついていると橘さんに出会う。行き着く先は、皆似ている。自称ガイドという詐欺の一種の女性にも出会う。顔に痣があり(きっと男が悪いのだろう。)いかにもジプシーのようなのですぐに断る。本当に危ない街だ。友人は、昔、睡眠薬入りクッキーを食べさせられ荷物を奪われた事がある。 骨董街では、2千ユーロのイコン画が無性に欲しくなる。日本円で24万円。諦める。 欲しいものは高いか、ディスプレイかである。手に入らないように出来ている。 ホテルの1階のスーパーで惣菜を買い部屋で食事。ホテルの並びのショップでイタリア製の43ドルの財布を買う。一目惚れ。 14時から劇場でトラックへの荷積み。皆良く働く。 あっという間に終わり、ダディネラさんの案内で美術館へ向かう。古いイコンの特別展を見る。素晴しい物も多い。やはり骨董街で見つけた150年前のイコンを買うべきだったか!!! 疲れたのでホテルで少し休む。 夕方よりお世話になった大使夫妻、志賀さんのルーマニアの両親、遠藤さんの弟さんの紹介で本番当日楽屋におにぎりを差し入れてくれた和子夫妻をお呼びして最後の晩餐がもようされた。 生演奏のバンドがうるさく、会話が弾まない。途中から大使が帰るまで大使と話をする。福島の生まれだそうだ。生涯でこんな事ってあるのかしら。 最後にお世話になった方々に一言ずつ頂く。無茶苦茶盛り上げる。誰か泣くかな?と、思ったけれど、泣かなかったな−。残念。解散。 今日も飲み部屋として解放する。 七字さんや冨田さん、橘さん、陽子さん等と盛り上がる。増田さんの部屋で皆盛り上がっていると言うので、余ったお酒をもって襲撃。1時過ぎ。お酒と皆を置いて部屋に帰る。(笑) 増田さんの部屋は角部屋で、表通りに面しており、バルコニーがあり可愛かった。韓国の李朝のベットのようなソファーに遠藤さん、緒方さんがちょこんと座ってお茶を飲んでいて可愛い。 色々あったが、皆に感謝する。 明日は日本へ帰る。 追記 この日パーティーの後にノン・ストップ・ショップに買い物にいった時にやってきました。売春の斡旋人。ビューティフルガールしか聞き取れなかったけれど志賀さんに訪ねたらそれはそうだと言う事で恐ろしいですね。どうも、この国では、ホテルと手を組んでそういう事している所もあるらしい。そして、偽警官の登場で金取られて終わり。って、パターンらしいです。 この旅、なんの事件も無かったようですが、密かにあったのです。例えば、川良が教会で絡まれたり、畑板(後輩)がキシニョフで手に10万ドルと書かれて人買いに売られそうになったり、緒方さんが病院に救急車で運ばれたり。でも、全員、(ダディネラさんは、里帰りと言う事でのこりましたが。)無事に帰って来れて良かった。本当に! |
2003/06/09 『 帰国。 』 朝4時集合。山下陽子さんのモーニングコールでは起きられず、同室に戻って来た山下さんに起こされる。ありがたい。ひとりだったらまずかっただろう。 七字さんが少し遅れたが、予定通りバスは出発。中杉さんと今後の課題を話す。 飛行機は吉岡とチケットを交換してようやくビジネスクラスへ。素晴しい。 これは堕落する。アムステルダムまで大爆睡。 アムスでは、マリファナカフェに行きたかったが、日曜日で町中が休みだった。 王立美術館とゴッホ美術館へいく。フェルメールとかレンブラントをみる。めちゃくちゃ上手い。どうやって描いたのか。ゴッホも何点かは見ごたえがあったが、売れない画家だったっていうのが良く分かった。 飛行場へ戻り、すっごいエロDVD(無修正)などが売っているのが発見。劇団昂の平田氏に買っていってあげようかと思ったが、高すぎて手が出ず・・・。 今、ビジネスクラス最高の待遇でこれを書いている。 思えば長かったようだが、短い旅だった。もう少し色々やる事があったであろうが、今回もいつものように全力をだしたつもりだ。 書き忘れたが、竹内さんは無事にパリから戻り、約束のクロワッサンを買って来てくれたが、残念ながらカフェ・オ・レはインスタントのパックだった・・・。 、、、ポットにいれて熱々のを持って来ると言ったのに・・・。 追記 まずは、ここまで読んでくれてありがとうね。 いやー。朝は、ホントに起きられなかった。山下さんも気を使ってくれて3時30分まで寝かせてくれたし。ありがたい。下着や歯ブラシなど大体捨てて。お土産を変わりにつめた。七字さんは、1人部屋だから起きれなかったみたい。 飛行機で何故かアムスのガイドブックをもっている山下さんに借りて読んでいたらアムスって麻薬が合法な訳じゃないのね!5グラム以下は、黙認してるだけらしい。知らなかったなー。 ビジネスクラスは、とにかく、シートが大きくほぼ真横になって眠れるのです。映画の画面も自分専用のが付いていて食事も選べるし、飲み物もまずはシャンパン。カクテルも頼める。いたれりつくせり! 最後に、ボートのメールに届いていたモルドバで『小栗〜』を観た方の文章をのせます。 アブラモヴァアラ氏よりE-mail 2003.5/29 15:41 『親愛なる友達』 私は今この手紙を遠いモルドバから書いてます。しかし、昨日あなた方の劇団の俳優達の素晴しい演技をみてからもはや遠い国ではなくなったような気がしています。あなた方の昨晩の公演に心から「有り難うございました。」と申し上げたいと思います。それは私自身の内なる世界を覆すものでした。 私は以前から日本の文化に興味を持っており、実際日本の文化は世界中で最も興味深くユニークな文化だと思っておりました。しかし、(夕べの公演を観るまでは)日本人があのように率直で、美しく、尊厳を持っている人達だと思っておりませんでした。 昨日の演劇は、『小栗王子と照手姫』というものでした。才能豊かな俳優達の素晴しい演技、音楽家や衣装デザイナーの素晴しい仕事、そしてこの仮面劇の全体を創られたと伺っている遠藤啄郎氏の力量に驚嘆しました。 この演劇に関わっておられる全ての素晴しい方達に感謝します。本当に見事な公演でした。この広い世界で私達を結び付けてくれたこの公演を私は生涯忘れる事は無いでしょう。過去を尊重し、現在を賞賛し、そして未来に思いをはせ、そしてその全てをあらゆる人と分かち合いたいと思います。 あなた方が昨晩下さった素晴しい時に心から感謝しています。チラシの裏にE-mailアドレスを見つけて、黙っている事が出来ませんでした。本当に素晴しかった、有難う! |
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